安全保障輸出管理

ジョブ 貿易事務所 は 安全保障輸出管理に関する各種コンサルティングを実施しています。(キャッチオール規制、リスト規制、コンプライアンス・プログラム(CP = 輸出関連法規の遵守に関する社内規定)、輸出許可に関する各種申請、など)

CISTEC認定試験 (安全保障輸出管理実務能力認定試験) に合格し、認定を取得しているコンサルタントがコンサルティングを行ないます。

 

2002年4月1日に 「キャッチオール規制」 が導入され、従来よりも厳しい輸出管理が必要となリました。 キャッチオール = Catch All = 全て捕らえる、ということから原則として全品目と全世界向けの輸出が規制の対象です。 具体的には、塩、セメント、医療用品、プラスチック製品、ゴム製品、繊維製品、ガラス製品、陶磁製品、金属製品、工具、楽器、時計、玩具、真珠、貴石など、広い範囲の貨物(と技術)が対象となっています。   輸出を行なう者は、国際的安全保障の観点から輸出管理を行う必要があります。 最近、この種の問い合わせを受ける事が多くなって参りましたので、キャッチオール規制に重点を置きながら、安全保障輸出管理の概要について出来るだけ平易な言葉で、輸出初心者にも分かりやすいように解説したいと思います。 また、「技術の輸出(正しくは、技術の居住者から非居住者への提供)」 については、「貨物の輸出」 とは分けて記述します。 尚、2004年9月時点の法令に従って記述を行ないます: 法令は不定期に改正される場合があります。)

 

安全保障輸出(貿易)管理とは

日本には 「武器輸出三原則(1967年:佐藤内閣)」 があり、従来から武器そのものはもとより、それらに関連する貨物や技術の輸出や提供にも規制があります。 それらに該当する貨物を従来から輸出している企業にとっては 「安全保障輸出管理」 という言葉は特に耳新しいものではないはずです。 しかしながら、多くの輸出企業(個人)にとっては未だ耳慣れない言葉であると思います。  キャッチオール規制の導入と共に、輸出を行なっている全ての企業や個人にとって、安全保障という観点から自社の輸出取引をチェックする必要が出て来ました。 該非判定 の結果、輸出規制貨物(技術)として該当する場合には、経済産業大臣の許可を得て輸出しなければなりません。

尚、「武器輸出三原則」は、2014年4月1日に第2次安倍内閣の下で武器輸出三原則に代わる 「防衛装備移転三原則」 を発表、日本は従来の武器の国産重視政策を転換して、国際共同開発を推進することとなりました。 防衛装備移転三原則では、武器の輸出入を基本的に認め、その上で禁止する場合の内容や、厳格な審査を規定する内容となっています。

現在の岸田政権は、2023年12月22日持ち回りでNSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開き、防衛装備品の輸出ルールを定めた 「防衛装備移転三原則」 の運用指針を改正しました。 これにより、外国企業から技術を導入し国内で製造する「ライセンス生産」の装備品の輸出について、これまではアメリカに対し部品のみ認めていましたが、完成品も含めてライセンス元の国への輸出が可能となりました。

 

第 1 章 - 国際的な輸出管理体制

東西冷戦の終結と共に、世界の安全保障の枠組みが 「ココム型輸出管理」 から 「不拡散型輸出管理」 というものに替わりました。  これは、下記に示す四つの国際的輸出管理体制から成り立っていて、その目的は 「大量破壊兵器の不拡散と通常兵器の過剰な蓄積の防止」 にあります。
1.ワッセナー・アレンジメント(WA) = 通常兵器及びその関連の汎用品の輸出規制
2.原子力供給国グループ(NSG) = 核兵器の開発等に転用可能な汎用品の輸出規制
3.オーストラリア・グループ(AG) = 化学兵器の開発等に転用可能な汎用品の輸出規制
4.ミサイル技術管理・レジーム(MTCR) = ロケット、無人航空機の輸出規制
(日本は、四つの全ての国際的輸出管理の枠組みに参加しています。)

また、現在の日本の安全保障輸出管理は、次の三つの規制方針に基づいています。
1.大量破壊兵器の不拡散に係る規制
2.通常兵器の過剰な蓄積に係る規制
3.日本独自の武器輸出三原則等に係る規制

 

キャッチオール と 規制の内容

具体的な規制は、次の二段構造で実施されています。
1.リスト規制 ----------- 従来から規制の対象となっていた貨物(技術)
2.キャッチオール規制 --- 新たに追加された規制対象の貨物(技術)
     2−1: 大量破壊兵器等キャッチオール規制
     2−2: 通常兵器キャッチオール規制

リスト規制をご存知の輸出者は、従来から安全保障輸出管理に取り組まれていると思いますので、ここではキャッチオール規制に重点を置いて記述します。

なぜ、輸出者は安全保障輸出管理に注意する必要があるのか?
1.原則全品目、全地域向け輸出が規制の対象である事。
2.違反した場合は、罰則 (刑事罰、行政制裁、警告処分) がある事。
3.法令を知らなかったとしても、違反した場合は免責されない事。
4.法令上の違反にならない場合でも、社会的制裁を受ける可能性がある事。

国際的な平和及び安全の維持を妨げるような行為を行なったり、そのような行為に加担する事は許されない、というのが安全保障輸出管理に注意 しなければならない根本理由ですが、現在の法令と社会情勢に照らして注意すべき理由を考えて見ます。

 

1.原則全品目、全地域向け輸出が規制の対象である事。

キャッチオール規制が導入された事により、食料品や木材など、およそ大量破壊兵器等(核兵器、生物・化学兵器、及びそれらを運搬できるミサイル・ロケットなどを指します)の開発等、並びに通常兵器の開発等に用いられる恐れが少ないものを除き、 ほとんどの貨物が輸出規制の対象となりました。 キャッチオール規制は 「大量破壊兵器」 や「通常兵器」の輸出を規制しているのではなく、「大量破壊兵器等の開発等」や「通常兵器の開発等」に用いられるおそれの強い貨物の輸出を規制しています。

キャッチオール規制の概念: 
キャッチオール規制は、リスト規制で規制されていない貨物・技術を輸出又は提供しようとする場合に無条件に許可を必要とするものではなく、当該貨物・技術が大量破壊兵器等の開発等や通常兵器の開発等の為に用いられるおそれがある場合に
経済産業大臣の許可を必要とする制度です。

1−1:  該非判定 − 許可申請が必要か不要かのチェック

キャッチオール規制の対象貨物は 「原則全品目の全地域向け輸出」 ですから、原則として全ての輸出貨物が対象となります。 しかし全ての輸出に経済産業大臣の許可が必要という訳ではありません。 そこで、その輸出に許可が必要かどうかを判断する必要が出て来ます。  それを 該非判定 と云います(正確には、輸出しようとしている貨物や提供しようとしている技術が、キャッチオール規制に該当するか非該当なのかを判定する事を指します。 非該当であれば、許可申請は不要です。)

該非判定は、キャッチオール規制 と リスト規制 の両方について行なう必要があります。 どちらから先に調べるかは、輸出者の業態により異なるでしょうが、先端技術などの貨物や技術でないならば、キャッチオール規制から着手した方が効率的でしょう。 イメージとしては、次のように表せると思います:−
輸出管理の対象貨物(技術) すべての輸出貨物(技術)
キャッチオール規制の対象貨物(技術) 原則全貨物(技術) −  食料品や木材などを除いたほとんど全ての貨物(技術)
リスト規制の対象貨物(技術) ある程度限定されたハイ・スペックの貨物(技術)

1−2: キャッチオール規制の対象貨物

原則全品目となっていますが、法令の条文では 「輸出貿易管理令別表第1の16の項の中欄に掲げる貨物」 であり、その内容は 「関税定率法 別表第25類〜40類、第54類〜59類、第63類、第68類〜93類、又は 第95類に該当する貨物 (1〜15までの項の中欄に掲げるものを除く。」 となります。

輸出する貨物が、規制貨物に該当するか否かを判定する事を 該非判定 と云います。 該非判定の結果、規制貨物に該当する場合は、輸出する前に 経済産業大臣に許可申請をし、許可を得ておく必要があります。

但し、輸出する貨物が前述の 「16の項の中欄に掲げる品目」 に該当する貨物であったとしても、次の場合には許可申請は不要となります。

1−2−1:  輸出先が 「グループA」 (旧称; ホワイト国) に 呼称変更された である場合(輸出貿易管理令別表第三の地域)
グループ A 向けの輸出の場合は許可申請は不要となります。
グループ A  = アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国 (以上 26カ国 2019年8月現在)  大韓民国は2019年8月7日に除外が公布され、2019年8月28日に施行されましたが、我が国の岸田文雄政権と韓国・尹錫悦政権との間で関係改善の話が進み、2023年7月21日に再度ホワイト国に組み入れられました。

1−2−2:  客観要件 に 非該当 の 場合
輸出先がグループ A以外の場合でも、客観要件 に 非該当であれば許可申請は不要になります。 客観要件には、「用途要件」 と 「需要者要件」 の2種類があります。

用途要件 = その貨物が大量破壊兵器等の開発等やそれに関連する用途に用いられるおそれがあると輸出者が知った場合。

需要者要件 = その貨物の需要者(輸入者ではありません)が、大量破壊兵器等の開発等やそれに関連する行為を行なおうとしている場合や、過去に行なったと輸出者が知った場合。  或いは、経済産業省が提供している 外国ユーザーリスト に、その貨物の需要者が載っている場合。
但し、その貨物が用途や取引の態様から大量破壊兵器等の開発等やそれに関連する用途以外のために用いられる事が明らかな場合は、需要者要件に非該当となります。
また、輸出する時点でその貨物の需要者(輸入者ではありません)が確定できない場合(在庫品販売など)も、需要者要件に非該当となります。
 

1−2−3:  許可申請が必要となる場合
上記にて、許可申請が不要になる場合を示しましたが、経済産業省から通知を受けた場合は、許可申請が必要になります。  経済産業省から通知を受ける事を インフォーム要件 と云います。
 

1−3:  リスト規制の対象貨物

リスト規制の対象貨物は、キャッチオール規制が導入される以前から既に規制を受けていた貨物です。   法令の条文では 「輸出貿易管理令別表第1の1の項〜15の項の中欄に掲げる貨物」 であり、その詳細な仕様は 「輸出貿易管理令別表第1及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令(貨物等省令)」 に規定されています。 該非判定に際しては、貨物の仕様について正確な判断が要求されます。

リスト規制の対象貨物は、キャッチオール規制の対象貨物よりも高い技術や精度が要求されている貨物です。 従って、対象となる貨物の種類は少なくなりますが、貨物の専門性や特殊性が高くなるので、該非判定には専門的な知識が必要になります。

リスト規制に該当する貨物(技術)の場合は、キャッチオール規制の場合とは異なり、ホワイト国向けの輸出であっても許可申請が必要であり、用途要件や需要者要件などに非該当であっても許可申請が必要です。

また、リスト規制には非該当であっても、キャッチオール規制に該当する場合も有り得ます。


1−4:  技術の輸出規制

世界の安全保障に係る貨物の輸出に規制があるのと同様に、その貨物に関連する技術の輸出(提供)にも規制があります。  技術とは、簡単に言ってしまえば設計図やノウハウなどの事を指します。 従って、輸出(提供)するときの形態としては書面やパソコンで取り扱えるデータの場合もあるし、技能訓練・研修も含まれますし、口頭で行う技術的な説明なども含まれます。 従って、貨物の場合とは異なり 「輸出」 ではなく 「居住者から非居住者への提供」 という言葉が用いられます。 居住者とは、日本に住んでいる者の事を指し、非居住者とは海外に住んでいる者の事を指します。  例えば、日本の本社工場に3日間の技術研修の為に来日している海外子会社に勤務する日本人の社員は、非居住者となりますから、注意が必要です。

技術に関しても、貨物の場合と同様に 「リスト規制」 と 「キャッチオール規制」 の二種類の規制があります。  リスト規制に該当する技術とは、リスト規制に 該当する貨物の設計、製造又は使用に係る技術 を指し、キャッチオール規制に該当する技術とは、キャッチオール規制に該当する貨物の設計、製造又は使用に専ら係る技術を指します。

該当技術を非居住者に提供する時には、貨物の場合と同様に経済産業大臣の許可が必要です。


以下、その2 へ 続く

 

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