創業35周年を迎えて


昭和60年(1985年)に 「貿易事務所」 「貿易顧問」 という 新しいコンセプト で 創業した ジョブ 貿易事務所 は 2020年10月 に創業35周年を迎えました。  近年は、「貿易事務所」 や 「貿易顧問」 という言葉を使って、業務を提供している事業者が他にも出現し始めて来ています。 ジョブ 貿易事務所 が35年前に考え付いた新しい概念がようやく社会から認知されてはじめて来たように思います。  これは、従来の画一的であった間接貿易という伝統的な取引形態にとらわれず、貿易形態の多様化が進んできたと云う証明であると思います。  その意味で、ジョブ 貿易事務所 のこの25年の歴史は、21世紀の日本の貿易市場に多少なりとも貢献して来ていると自負しております。 

 

今となっては懐かしい話ですが、創業時に 「貿易事務所」 という業種で役所に届出を行なったところ、貿易会社と誤解をされてしまい 「取り扱い商品の種類を記載するように」 との指導を受け、大変困った事を思い出します。  ちょうど、床屋さんに対して 「あなたが髪を刈る人の職業を事前に記載するように」 と、指導を受けたようなものです。

当時、貿易会社が 本業とは別に 「貿易代行」 や 「貿易相談」 という名目でサービスを提供しておりました。 つまり、自分の会社で貿易をやっているのだから、それと同じようなサービスを提供すれば、「貿易代行」 や 「貿易相談」 といいう事業形態も可能になると云う発想だったのでしょう。  従って、役所の担当官は、ジョブ 貿易事務所 も この種の貿易会社であると誤解されたようで、貿易会社としての 「取り扱い商品」 を記載せよと、おっしゃられたようです。 

ところが、ジョブ 貿易事務所 は 貿易コンサルティング 〜 実務指導 〜 業務代行「専業」 としている訳ですから、事前に 「取り扱い商品」 など、ある訳がありません。  取り扱い商品は、「将来クライアントが相談に持ってこられる商品」 という事になります。  当時、一部の貿易会社が行っていたような貿易代行や貿易相談とは、根本的な観点が違っていたと思います。

ジョブ 貿易事務所 の 創業から 10年経って、ようやく ジェトロ(日本貿易振興機構)が、「ジェトロ認定 貿易アドバイザー」 の 第一期生を輩出したくらいですから、昭和60年当時の役所の担当官が誤解をしても、やむを得ぬ事だったと思います。 

また、ジョブ 貿易事務所 が創業時から重視している点に、「守秘義務」という事があります。 貿易コンサルタントには、「業務上知りえた事の守秘義務」 もあると考えています。  それだけクライアント企業の業務の深いところまで踏み込まないと、よいコンサルティングは出来ないと考えるからです。  守秘義務の観点から、貿易会社と貿易事務所を並立させてはいけないと考えています。

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「貿易商務論」という学問をご存知でしょうか? 貿易取引に関わる実務上の手続きは、この貿易商務論という学問を基礎として成り立っています。  そこには貿易実務を遂行する上で、自己流の判断や解釈を盛り込む余地はありません。 貿易取引を正しく行なう為には、「理論的裏付け」と「実務経験」という二つの要素が必要になります。 自己流の貿易実務は、トラブルの元凶です。 クレームが続発するような取り引きは、コストの高いものにもなります。

しかしながら 現実の貿易の現場では日々の貿易実務は、「経験則」 だけを頼りに行われていることが非常に多いのです。  つまり、貿易会社の実務担当者も、ナゼこの書類を作成するのか、ナゼこの文言を用いるのか、ナゼこの手続きが必要なのか 等々、理論背景を知らずに毎日の仕事を行っている場合が多いのです。  「ナゼ、その書類を作るのですか?」と尋ねると、「前任者が作っていたからです。」という回答が返って来ます。  この、経験則に頼った貿易実務には非常に大きな危険が潜んでいます。 その理由は、貿易関係法令が不定期に改正されるからです。 理論的な裏付けが無いと、この法令改正に対処できなくなってしまうと云う訳です。 実は、この理論的な背景を研究する学問が 「貿易商務論」 なのです。 残念な事に、貿易商務論のカリキュラムを提供する教育機関は非常に限られているのが現状です。 よって、経験則依存の貿易実務がまかり通る事になってしまいます。

ジョブ 貿易事務所 は、日本の企業にとって貿易取引が身近なものになり、各企業がビジネス・チャンスを海外に拡大してゆくという事をとても喜ばしく考えています。 しかし、その貿易取引は、安全性が高く、健全に成長して行って欲しいと願っています。

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先日、ある法律事務所の弁護士さんから相談を受けました。 相談の内容は貿易取引に関係した国内の訴訟問題(控訴審)についてでした。  裁判の経緯を見てゆくと、やはり 自己流の貿易手続き に、その紛争の原因がありました。

強くなった円、海外渡航/国際輸送の簡便化、インターネットの普及、外為法の改正、と、貿易取引を取り巻く環境が変化し、「個人輸入」という言葉も誤った解釈のままで世間に広まった為に、貿易取引というものが大変身近になったような印象を与えています。 一方の側面では、貿易取引が以前よりも容易になったことは事実なのですが、他方では 「自己責任」 が更に求められるようになっています。

1998年の外為法の大幅改正は、それを象徴しています。  制度上の「規制緩和」とは、「自己責任」の負担部分が増えるという事です。 前記の訴訟事件に接してみて、理論なき実践には相当の危険を伴うという事を再認識させられた思いです。

 
 
 
 
 

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